2017年8月10日木曜日

【お知らせ】本日のNHKニュースおはよう日本に出演しました

いつもスマイリーの活動を応援いただきありがとうございます。
スマイリーの片木です。
本日のNHKおはよう日本で臍帯血医療の問題について出演しました。
http://www.nhk.or.jp/ohayou/digest/2017/08/0810.html
 
臍帯血医療は白血病などの治療にはすでに承認されていますが、一方で効果が確認されていないがんや美容医療に治療として用いている(厚労省が求める手続きを踏んでいない)悪質なクリニック等が先日摘発されたばかりです。
http://www.nhk.or.jp/nc11-news/digest/20170628/index.html

当会にも臍帯血医療を受けてみたいという患者さんの相談もあったことから思いを率直に伝えさせていただきました。

患者さんたちのなかには、抗がん剤治療でも「必ず治るとはいわれない(治るのか不安)」ことや「副作用への強い不安」などから、それならば「未承認の治療を受けてみたい」という思いで何かいい医療はないかと情報を探し、こういった未承認の治療を視野に入られらる方もおられると思います。
 
しかし、その患者さんの不安につけこみ、あたかも理論上は効果があるような口ぶりで患者さんに不適切な医療を自由診療として高額で行うクリニック等があとをたちません。

ある患者さんが言いました。
「標準治療でも”やってみないと効くかどうかはわからない”といわれました。自由診療のクリニックも”やってみないとわからない”のは同じじゃないんですか?」
「歯医者さんでは銀歯が嫌だったら自由診療でセラミックの歯にといういい治療が受けられる、がんの自由診療も保険では受けられないいい治療が受けられるのではないのですか?」
「医療機関(病院)だから悪いことをするわけがない」
本当ならそうあって欲しいのですが、実はまだ法的な整備が行き届いていないことから、今はインチキや詐欺に近いといっても仕方がない医療機関があるのが実情です。
 
標準治療となっている治療は、治験という薬事法や厚生労働省の省令に乗っ取った厳しい条件下で臨床試験が行われます。
例えば、ある薬が、卵巣がんの患者さんにどれくらい腫瘍の縮小効果が出たのか、再発までの期間はどれくらいだったのか、副作用はどのようなものが出たのかを厳密に確認をしていきます。
それである程度の卵巣がんに効果があると認められたものが、医薬品医療機器総合機構というところで審査をされ、厚生労働省の部会でも審議されたうえで承認されます。
その後、中央社会保険医療協議会で薬価などが決まりみなさんに使われるようになります。
製薬企業は、厳密に衛生面や安全面を確認された工場で薬を製造することが義務付けられます。また製薬企業はどこの病院でも正しく使ってもらえるようにお薬についているぴらぴらの添付文書にどのような患者さんにどのように使うか、どのような患者さんには投与してはいけないかなど決められたことを明示することが求められています。
その上で患者さんに投与されるようになっています。
ただそれだけでは標準治療になりません。
承認されたお薬は、既存の標準治療のお薬と、どちらが効果があるのか、どちらが副作用が少ないのか比較試験がされます。
卵巣がんもそういう手順を踏んで今の標準治療があります。
 
(画像の無断利用はお控えください。使いたい時はご連絡を。)

一方で、今回の臍帯血などの自由診療は、効果があたかもあるようにホームページ等に記載していますが、そのデータ自体が本物かどうか確認しようがありません。
先日も朝日新聞アピタルで酒井先生が指摘されていましたが画像でうまく印象操作されているところもあります。
http://www.asahi.com/articles/SDI201707270521.html
 
また、未承認の医療を何百件、何千件と自慢しているようなクリニックもありますが、それだけのニーズがあるのに、どうして治験をしないのでしょうか?
治験をすれば、卵巣がんに効果があるなら卵巣がんの患者さんがみんな保険適用で受けてくれるのです。
高額医療も適用され、患者さんは喜びます。
たくさんの人が使ってくれて開発側も損はないでしょう。
今や日本では医師主導治験というものも整備されており、別に製薬会社が治験しなくても開発はできます。
それでもしないというのは「厳密な環境下で試験をやれば結果を出せないのではないか」とインチキを疑われても仕方がないと思います。
 
過去に私は、ある自由診療クリニックの説明会にしれっと参加しました。
卵巣がんだというと駅まで看護師が迎えに来てくれて、クリニックではドリンクサービス(インチキに施しを受けたくないので体調が悪いといって飲みませんでした)。
目の前に置かれた資料には「治った人たちの体験談(でもよく読むとその多くが別の病院で標準治療を受けているのでどっちが効いたかわからない)」が並べられ、芸能人が取材に来たというレポートなども置かれていて、いかにも良さそうだ、効くのかもしれないと思わせる資料たちばかりです。
そして医師が登場し説明の動画でびっくりしました。
がん細胞をシャーレに入れて、それに免疫ワクチンをぶっかけてがん細胞が死んでいくのを見せるのです。
何も知らなければ体の中でこんな素晴らしいことが起きるのだろうと感動するのかもしれません。
さすがに我慢の限界になり挙手をしました。
「がん細胞は血管等から栄養をとって増殖をしていくと思うのです。シャーレの中に入れられた細胞はすでにがん細胞にとって環境が悪いといえます。それにワクチンをぶっかけて死んでいくと言いますが、シャーレの中で起きたことは体内の環境とは違うことから体内で同じことが起きるという説明にはなっていません」
はい、もちろん「おかえりください」になり、当日見せていただいた様々な資料のコピーは置いて帰るよういわれ持ち帰れませんでした。
帰り道はもちろんナースの見送りはありませんでした。
 
今、卵巣がんに「これさえやっていれば大丈夫」という治療がなく、患者さんが不安と向き合われていることは相談を受けていても日々感じています。
だからこそ本当は主治医の先生がその思いに向き合いお話をしてほしいと思いますが、今の婦人科は患者さんがとても多く、医師は限られた時間に説明を行うには限界があり大変だという現状も知っています。
 
でもどうかいま皆さんが受けている標準治療がどういう治療か不安ならば質問をしてください。
多くの患者さんが治験に参加してくださり良い結果を出したものがみなさんに提供されています。
また、現在卵巣がんにはいくつかの治療薬の治験も行われています。
また遠くない将来、新たな新薬の治験が始まるでしょう。
最初にお話ししたとおり、治験は厳密な環境下で行われます。
もちろん効果や副作用を調べるためのものですから、効果が出ないことも強い副作用が出ることもあるかもしれません。
ただ、きちんと同意書を元に説明を受けられますし、副作用が出た時にはきちんと副作用の治療を受けられます。
効果が見られない時にはすぐに本来受けるべき標準治療を受けることもできます。
もちろん治験は実施医療機関が限られており、また患者さんの状況もとても限定されるため、患者さんが治験に入るにはすごくハードルが高いです。
でも本来、未承認の医療を行うのは予期せぬ副作用も現れることがありますから、それくらい厳密な環境下ではないと患者さんを守れないのです。
 
スマイリーでは、9月1日に名古屋で臨床試験の勉強会を名古屋で開きます。
臨床試験とか治験について患者さんの質問を受けながらわかりやすくお話ししていこうと思ってます。
臨床試験をどうやって探すの?
臨床試験に参加しないかと言われたらどういう質問をしたらいいの?
などざっくばらんにお話ししませんか。
がんの種類は問いません。卵巣がん以外の参加も可能です。
http://ovarysmiley.blogspot.jp/2017/06/91.html
 
また9月30日は六本木でグローバソンを開催します。
婦人科がんを応援しようという趣旨ですが婦人科がんの応援という趣旨を理解していただけたら他のがんでも可能です。
今年はミュージックフェスティバルということで音楽とのコラボなのですが、埼玉医大の藤原恵一先生にご協力いただき、こちらも臨床試験についてざっくばらんにお話しできる場にしたいと思ってます。
http://globeathon2015.e-ryouiku.net/

患者さん、ご家族のみなさん、不安だからこそ正しい情報を得るために一緒に勉強しませんか?
最後はスマイリーの活動の宣伝になり恐縮ですが、私たち卵巣がんは、再発の多いがんとして知られており、その不安から悩まれる患者さんやご家族をたくさん見てきました。
そして何百万も払ったにも関わらず「効果がなかったら出て行って」と自由診療クリニックを追い出され、その後の治療を引き受けてくれる病院や、緩和ケア、在宅ケアを探すのに苦労された患者さんともたくさん出会ってきました。
緊急胴体着陸をする飛行機のように最後の時間を過ごす患者さんや家族を目の前にしての怒りから、正しいことを知って欲しい、インチキについて警戒して欲しいと情報発信を続けています。
 
ただ患者さんや家族にはこういう勉強会は「面白くなさそう」「やくにたたなさそう」「難しそう」とあまり人気がなく、毎回参加者が少なく悲しくなるのですが、それでも正しい情報を伝え続けることの大切さを使命として続けています。
どうか興味があればご参加ください。