いつもお世話になっております。
スマイリーの片木です。
2017年8月8日にアストラゼネカ社はBRCA1/2遺伝子の変異のある再発卵巣がん患者さんのための治療薬「オラパリブ」の承認申請をしたと発表しています。
http://www.sankei.com/west/news/170808/wst1708080036-n1.html
それに伴い、患者さんやご家族からすでに「いつから投与できるのか」といった問い合わせがきています。
現在、厚生労働省の薬事審査期間も短縮されておりその平均値から「見込み」はわかりますが、実際はそのとおりとは言えません。
審査の間も、審査当局から企業へ色々な「照会事項」などがあり、それらに企業が迅速に回答するかなどで期間は変わってきます。
よく、製薬企業側はいつ頃の見込みという触れ込みをするのですが、治療薬を待つ患者さんにとってはそれがズレることで落胆される方も少なくないので見込みをあたかもその時期と言わんばかりに発表せんといて欲しいなぁと思うのですが、それは企業側の戦略もあるのでしょうし仕方がないですね。
「最善を期待しながらも、思う通りにいかなかった時のためにいろんな状況を考えて準備しておきましょう」とお問い合わせには答えさせていただいております。
BRCA遺伝子の変異を調べるということは、ご自身だけではなく、親や子だけではなく「血縁者」にとっても影響する問題です。
日本には現状ではみなさんを偏見や差別から守る法が整備されていません。
また遺伝子カウンセラーも少なく、説明と同意取得を誰がするのかといった整備も必要となってきます。
例えば、患者さんがブログに「オラパリブの投与をしています」と書いただけで「遺伝子変異がある」ことが知られてしまいます。
遺伝する可能性は50%ですから必ず遺伝するというわけではないのに、お子さんが就職先で「遺伝性でがんになる可能性が高い」として不当に扱われたり、嫁ぎ先で差別を受けたり辛い思いをされることがないように患者さんの発信にも注意が必要になってきます。
(海外の研究の結果では遺伝子変異がない卵巣がんでも有用であったようなお知らせもあるのでいずれは日本でも変異のない患者さんにも適応が拡大されるかもしれませんが、現状ではということです)
参考:https://www.astrazeneca.co.jp/media/press-releases1/2017/2017082201.html
遺伝子変異を知ることの利益と、知ることの不利益をしっかりと医師やカウンセラーに確認する必要があるお薬です。
そういったことを今のうちに、少しずつ家族と一緒に考えていく時間にしませんか?