代表の片木です。
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今朝、読売新聞、産経新聞などに「臍帯血販売業者逮捕へ」などという報道が掲載されました。
(参考:読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/national/20170824-OYT1T50180.html?from=tw
この臍帯血販売に関しては厚生労働省が2017年5月から6月にかけて再生医療を無届けで行なっているとして臍帯血を用いた治療を停止するように求めていました。
(参考:NHK)
http://www.nhk.or.jp/nc11-news/digest/20170628/index.html
先日もおはよう日本で特集されブローカーの方などもインタビューに答えていますので参考になるのではないでしょうか。
(参考:NHK)
http://www.nhk.or.jp/ohayou/digest/2017/08/0810.html
http://www3.nhk.or.jp/news/web_tokushu/2017_0816.html
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再生医療に関連する法案はいくつかあるのですが、
「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(薬機法)」
「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」
が、今回の肝となってきます。
これらの法律で
再生医療を行う際には届出をするよう義務付けられているにも関わらずにその手続きを行なっていなかったということなどが問題となっています。
今回の臍帯血の問題については「患者さんの安全性」に繋がる大きな問題が絡んでいますので、相変わらずの長文ですが少しでも読んでいただけると嬉しいです。
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みなさんが病気になったときに治療に用いている「お薬」は、薬機法のなかで「有効性と安全性を確保するための厳格な管理」が義務付けられています。
再生医療製品にも同様に以下に抜粋したような記述があります。
第六章 再生医療等製品の製造販売業及び製造業
(製造販売業の許可)
第二十三条の二十 再生医療等製品は、厚生労働大臣の許可を受けた者でなければ、業として、製造販売をしてはならない。
2 前項の許可は、三年を下らない政令で定める期間ごとにその更新を受けなければ、その期間の経過によつて、その効力を失う。
(許可の基準)
第二十三条の二十一 次の各号のいずれかに該当するときは、前条第一項の許可を与えないことができる。
一 申請に係る再生医療等製品の品質管理の方法が、厚生労働省令で定める基準に適合しないとき。
二 申請に係る再生医療等製品の製造販売後安全管理の方法が、厚生労働省令で定める基準に適合しないとき。
三 申請者が、第五条第三号イからヘまでのいずれかに該当するとき。
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またお薬の製造・流通・販売に関しては厳格な基準が設けられています。
GMP(Good Manufacturing Practice):製造管理・品質管理の基準
GQP(Good Quality Practice):品質管理の基準
GVP(Good Vigilance Practice):製造販売後の安全管理の基準
GPSP(Good Post-marketing Study Practice):製造販売後の調査試験の実施の基準
イメージしやすく話をすると、
例えばお薬を作るときに、お薬の1つ1つに成分のムラがあったらどうでしょう?
患者さんには効果が出なかったり、逆に効果は出ても強い副作用が出たりしてしまうかもしれません。
それでは困りますので、たくさんの薬を作っても同じものが作れるかチェックします。
この人が工場のラインに関わっているといい状態の薬ができるとか、この人が工場のラインに関わっているとよくないものができるなんていう人為的に品質が変わらないように、誰が関わっても安全な同じ薬ができるようチェックされます。
お薬を保管したり配達するときにいい加減な扱いをされてカビが生えてしまったらどうしましょう。
そうならないために温度や湿度、光が当たるなどの影響で品質が損なわれないよう、品質が保たれる日数や管理方法を定めたり、もちろん工場や倉庫での保管の間、出荷準備する間、配送の間などでも薬が安定した状態で届けられるようにされているかのチェックもされています。
以前、卵巣がんのある抗がん剤を作る工場が、アメリカからイタリアに変わったことがるのですが、そういった場合も、お薬を作る環境の衛生面なども含め徹底したチェックが行われ、日本からも医薬品医療機器総合機構の職員さんが現地に行き、衛生的に安全にきちんと薬が作られ日本まで届けられる状況が保たれているか確認をし許可がおりるなどの手続きが必要と説明を受けました。
薬を安心して飲める背景にはこういった法律や規制、基準があります。
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今回の「臍帯血」について、法で定められた手続きをしなかったという問題は、上記に示したような患者さんに安定した、品質が保証された、お薬を届けるという手続きをすっ飛ばしたということです。
つまり許可もされていない工場で衛生面がどれだけ担保されているのか、臍帯血が配達されるまでに本当にちゃんと温度や湿度を保ってたのか。
それらが確認できないものが投与されることがどんな怖いことかは理解できると思います。
下手をすれば健康被害も生じかねません。
この問題をお話しすると「届出をしなかったというだけでしょ?」みたいな「ただ書類提出を忘れていただけじゃないか」みたいな反応が返ってきたりすることがあるのですが、届出をしなかったことで患者さんの安全に繋がる色々な品質の面でわからないことが生まれるのです。
それこそ「本当に臍帯血を投与していたの?」なんて話にもなりかねないのです。
藁をもすがりたい患者さんに、そのような問題がある治療を提供し何百万円も取っていたということなのです。
ちなみに下部リンクは偽造医薬品を作っている工場の写真ですがこんな環境の悪いところで作られているかもわからないということなんです。
https://www.import-viagra.net/risk/risk03.html
今回は
「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(薬機法)」
「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」
の二つの法律を基に取り締まれるものでありますが、いわゆるインチキクリニックと呼ばれるものの一部が取り締まれただけで、この国には、科学的根拠が明らかにされていない治療をあたかも有効であるように印象付け高額なお金を請求し治療をしている医療機関がいくつもあります。
中には先進医療で結果を出せずに先進医療を続けられなかった治療を自由診療などとして大学病院等が行なっている事例も見受けられます。
これらについても最近広告規制が強められたりもしてきていますが、海外で導入されているように未承認の治療については規制当局に届けた上で臨床試験で行うなどといった規制も必要になってくるのではないかと思います。
それまでは、様々な問題とおもわれる事例を発見し、規制当局などに連絡をして現状を伝えていくという地道な作業を繰り返していくしかないのだと思いますし、みなさんにもできるだけわかりやすくお伝えすることも引き続き続けて行きたいと思います。