2017年4月11日火曜日

【コラム】がん検診は大切だけど・・・

いつもスマイリーの活動を応援していただきありがとうございます。
スマイリー代表の片木です。

スマイリーの活動の中でも「私たちと同じ辛い思いをして欲しくない」という会員さんから「卵巣がん検診」を呼びかけることができないかという提案をいただくことがあります。
発見時に進行がんが多い卵巣がん。
早期発見ができるならば予後は大きく違う、場合によっては妊孕温存もできるかもしれない・・・・そんな思いをヒシヒシと感じます。
自分が辛かったからこそ他の誰かに辛い思いをして欲しくない・・・。

卵巣がん検診においては過去に米国対がん協会が「このような自覚症状を感じたら婦人科にいったほうがいい」などといった調査結果等を出したこともあるのですが「それらの症状が出た=卵巣がん発見に繋がる確立が低い」と、結果として否定されるなど、まだまだ子宮頸がんや子宮体がんのように精度の高い検診方法が見つかっていません。
 
しかし卵巣がんは小児からご年配の方まで「女性ならどの年齢でも発症するがん」であり、若年の患者さん、親御さんから相談を受けることも少なくありません。
同じ思いをする患者さんを減らしたい、早期発見に繋げたい・・・と感じ、かつてスマイリーでも自覚症状とか発見時の状況他を調査研究をしようとしましたが残念ながら「これ」といった結果が出せませんでした。
ただ、海外・国内の予防や早期発見の発表には敏感でいたいと思っています。
 
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毎年4月9日を「子宮の日」として、検診や、子宮頸がん、子宮体がん、子宮内膜症、生理痛など女性を悩ませる疾患について興味を持って欲しいと呼びかけるイベントが全国各地で開催されています。
 
こういった活動も、子宮頸がんなどは若年層で発症することもありますし、進行がんで発見されれば治療に苦慮をするのは卵巣がんと同じです。
また排尿障害やリンパ浮腫などの後遺症を抱えることも少なくありません。
そして子宮を失う女性としての悲しみも・・・。
 
ただ、「検診を受けて」と呼びかける相手が「まだ子宮頸がん等に罹患していない女性」になることからというのは理解できますが、「子宮をたいせつに」という呼びかけは少し複雑な思いを感じます。

子宮頸がんになった女性が子宮を大切にしていなかったわけじゃないでしょう。
もちろん検診を受けていれば前がん状態で発見されたり、比較的早期に発見された「かもしれない」。
でも「私たちは子宮から生まれてきた」「子宮をたいせつに」
そういったメッセージは「子どもを授かることができない」「がんになってしまった」女性にとっては心に突き刺さるメッセージです。

それは卵巣がん患者も同じで、卵巣がんは「肥満(私には耳が痛い言葉ですが)」や「遺伝」といったリスク因子はわかっていますが、多くは原因がはっきりしていません。
また卵巣がんは自覚症状が乏しく早期発見が難しく、患者さんの多くが「子宮や卵巣も含めた広汎全摘出」手術を受けています。
これまで何人もの女性、そのご家族から「妊孕温存できないか」「子どもが授かることができない辛さ」について相談を受けてきたでしょう。
なかには「子どもを授かれないこと」を自分自身で責め続けてしまう患者さんもおられます。
その辛さと向き合いながら「自分のいのちのために仕方がなかったんだ」となんとか折り合いをつけて生きていくことになります。

先日、私の子どもといってもおかしくないくらいの女性が卵巣がんと診断されました。
「学業が継続できるのか」「将来、どのような生活になるのか」「社会人として自立できるのか」「自分と同じような経験をした女性はいるのか、いまどんな生活をしているのか」などたくさん質問を受けました。
そして「もう恋愛はできないのか」「生きていても辛い思いをするだけじゃないのか」と聴かれました。

当会にも若年で発症された患者さんはたくさんおり、その子たちひとりひとり生きていく道は違っています。理解してくれるパートナーと出会い恋愛をし結婚をした女性もいます。でもそこまでにたくさん思い悩むこともあったのだなということは結婚式に呼ばれたりお話を伺うなかで感じることも少なくありません。
ある患者さんは「パパになるのが夢」と大切な人が言ってるのを聞いて身を引きました。
ある患者さんは「40歳過ぎたら私はモテ期ですよ」と笑いながらいいました。
そう笑い飛ばせるまでどれだけの葛藤があったかなと思います(余計なお世話かもしれませんが)。
例え結婚をして子どもを授かっていたとしても「一人っ子だとかわいそうだよ」などと言われて切ない思いをすることもあります。

子どもを授かれない悲しみは、過去の歴史を紐解いても多くの物語で描かれており女性の永久のテーマであり「がん」でなくても抱える辛さでもあるのかもしれない。
でもいえるのは私たちは普通に生活をしてきてそして卵巣がんになり子宮や卵巣を失っているということです。
 
毎年この時期になると「子宮がないことを”身体を大切にしなかった”と責められているような気がする」という相談をいただきます。
でも「自分と同じ辛い思いをする人をひとりでも減らすためにああいう呼びかけ方をしているんだよね」と「愚痴はここだけの話」として気持ちを収めてくださいます。
出会う患者さんおひとりおひとり本当にやさしいなと思います。
 
検診や早期発見の大切さはわかるから。
同じ辛さを味わって欲しくない気持ちは同じだから。

でも、検診を呼びかける人たちにも意識してほしい。
呼びかけ文や主張していることが患者さんを傷つけていないかを。
どうせなら患者さんにも心から良い活動だと応援してもらえるようなものになってるかを。
だって、検診を呼びかけ、その活動に影響をうけ検診をうける女性のなかにも「もしかしたらがんに罹患していた女性」もいるかもしれないんだから。
言葉への配慮に敏感であってほしい・・・そう願います。
 
いっぽうで、私たちも「どんな言葉でもとりようによっては傷つける」ことを意識しなければなりません。
私の今回のコラムも「同じ辛い思いをして欲しくない」と検診を呼びかける人たちにとっては「あなたたちは配慮が足りない」と責めているように受け取られれば、その人たちを傷つけるのかもしれない。
どんな言葉でもそう。
「あなた美人ですね」といわれて「ありがとう」と素直に受け止めれる人もいれば「嫌がらせか」と受け止める人もいるかもしれない、言葉には両面がありその言葉を発する人の真意というのはその本人しかわからないのです。
だから受け止める側もどこか言葉に「鈍感力」というか「うまく置き換えるチカラ」「うまくスルーするチカラ」をつけていくしかないのかもしれません。
残念ながら私自身もその「チカラ」が極めてなくて、ついつい悪いほうに受け止めてしまうところがあるので気をつけていきたいなとおもいます。

でも、もし「わかっていても辛い」なんてときはどうか吐き出してください。
「この人にならいえる」そんな人を見つけて抱え込まないでくださいね。