2015年8月10日月曜日

【コラム】第57回婦人科腫瘍学会に参加しました

いつもスマイリーの活動にご理解と応援をいただきありがとうございます。
代表の片木です。

2015年8月7日(金)~9日(日)まで盛岡地域交流センター「マリオス」と、いわて県民情報交流センター「アイーナ」で開催された、第57回婦人科腫瘍学会学術講演会(学会長:岩手医科大学産婦人科学講座主任教授 杉山 徹先生)に参加しました。

(学術講演会は医療者の研究発表・学びの場であり一般の患者さん・ご家族向けではないため患者さん、ご家族がご自身の病気について情報を得たいというときは市民公開講座などにご参加くださいね。)




卵巣がんのセッションを中心に、支持療法(嘔吐・悪心について)や緩和ケアについてのセッションで3日間どっぷりと学んできました。
スマイリーの会員さんには会員専用SNSで、別途簡単なトピックスをお伝えしますね。

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ひとつ、このコラムの読者のみなさんにもトピックのおすそ分けですが、今回の学術講演会会長の杉山先生の会長講演を聞いてきました。

私たちはいま「標準治療」としてパクリタキセルとカルボプラチンの併用療法を受けていますが、こうした標準治療が決めるために「臨床試験」が不可欠です。

これまで「標準治療」としてきたものと、更なる効果が期待できるかもしれない治療の効果と副作用を比較する試験を行います。

多くの患者さんに説明をして同意をいただき、その患者さんを偏り(年齢やがんの進行期、体調など)が無いようにランダムに振り分け、治療を行い比較することで本当にその治療が効果があるのか副作用はどういうものなのかが分かってきます。

杉山先生は、日本人に特に多い卵巣明細胞腺がん(clear cell carcinoma)に対しての臨床試験の必要性を伝え、情熱をもって日本人の卵巣がん患者さんのために臨床試験にとりくまれてきた先生です。
※日本では明細胞腺がんの発生頻度は卵巣がん全体の25%で欧米の8%と比べて極めて高いがんです。


JGOG3014という試験で、標準治療であるパクリタキセル+カルボプラチンの併用療法と、イリノテカン+シスプラチンの比較試験を行い、無増悪生存期間(PFS:病勢の進行が見られない状態で患者さんが生存している期間)において、イリノテカン+シスプラチンが、劣っていない可能性を示されました。

それを元に、今度はより多くの患者さんに協力していただき、JGOG3017試験でイリノテカン+シスプラチンが標準治療であるパクリタキセル+カルボプラチンよりも有効かどうかの比較試験を行いました。

その結果が先日米国臨床腫瘍学会(ASCO)で発表されました。

結果としては、優位とは示されなかった(効果に差がなかった)のではありますが、これにより、シスプラチンは強い吐き気などが予想されることから、(特段の理由の無い)卵巣明細胞腺がんの患者さんには、標準治療は従来どおり行なわれています。

効果に差がなかったという結果を今知って少し残念に思われた患者さんもいるかもしれません。でも、こうしたしっかりした臨床試験で結果(論文)を出すことで、「~が良いと個人的におもうよーといった思い込みの治療」ではなく、「多くの患者さんに対して効果があった(副作用がどうだった)という科学的に根拠のある治療」を私たちが受けることができるのです。
世界的に、そして明細胞腺がんの患者さんにとって大きな意義のある臨床試験でした。

杉山先生は、英語でこの研究についてご発表されました。
日本人に明細胞腺がんが多いんだから日本の医療者が取り組まないといけない、まさに「救えるいのちを救うために」取り組まれてきた熱い思いに患者として何度も目頭が熱くなりました。

こうした杉山先生の熱い思いが、若い先生方に伝承されることでこれからも多くの研究が進み、医薬品が承認されたり標準治療が作られていくことを改めて感じました。

ちょっと難しいお話だったかもしれませんが、日本は世界に比較して臨床試験の数も論文の数も少ないという話は厚労省の審議会など出もよく提示されます。

でも、米国臨床腫瘍学会(ASCO)では婦人科がんで口頭発表できる良い研究は10もないのですが、そのうち1つか2つを必ず日本の婦人科医が担っていることはすごいことだと感じています。

今回の学術講演会では、日本の研究者だけではなく、海外の研究者の先生方も多く参加されていて、英語だけのセッションも多かったことが特徴的でした。

また、多くの先生方と臨床試験について話をすることができました。

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埼玉医大国際医療センター婦人科腫瘍科の藤原恵一先生とは、「Globe-Athon Japan2015」の打ち合わせをしました。


Globe-athon(グローバソン)は、社会に対して婦人科がんをひろく知っていただくことを目標に、国際婦人科がん啓発運動(GCAM)の呼びかけにより始まった取り組みです。
初回は2011年に米国ワシントンD.C.で開催され、現在では世界約80ヵ国で行われるほどの大規模なイベントとなっています。

日本では2013年に第1回を開催して皇居の周辺を24時間ウォークリレーをしましたが、今年はより患者さんに婦人科がんをひろく知っていただけるセミナーを開催する方向で話を進めています。

盛岡での打ち合わせということで「ぴょんぴょん舎」で盛岡冷麺を食べながらのキックオフミーティングでしたが熱いいい話し合いができました。

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今回、婦人科腫瘍学会には、福島のひいらぎの会の鈴木さん(スマイリーの立ち上げ時に副会長としてご尽力いただきました)、いつも国の政策に関して一緒に考え取り組んでいるパンキャンジャパンの眞島さんキャンサーソリューションズの桜井さんもご参加くださり、これからますます連携が深まりそうです。

多くの先生方ともいろんなディスカッションができました!

スマイリーではおなじみ(?)の勝俣先生には、私の読み込みすぎて付箋だらけになっている本にサインいただきました。
医療否定本の嘘」は卵巣がんについても触れられているので是非患者さんに読んで欲しい一冊です。
また学会で医師向けの「誰も教えてくれなかった婦人科がん薬物療法」という勝俣先生の新刊を買いましたがあっという間に売り切れてました。


また、 婦人科腫瘍の緩和医療を考える会のセッションでは発言の機会をいただきありがとうございました。
突然のことでアワアワしてしまいましたが、貴重な機会をいただき患者の思いを伝えられたことに感謝しています。

スマイリーにお声掛くださった先生方、患者会のみなさまに心から感謝します。

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最後に、食いしん坊の片木は学会終了後はホテルにこもらずに食べ歩いていました。




うえから、「ぴょんぴょん舎」の冷麺、「松の実」の雫石のミルクで作ったアイス、「盛楼閣」の冷麺、最後に岩泉のとろ生プリン(岩手のスイーツ一般投票ナンバーワンだったそう)。
写真を撮るのをわすれましたが、じゃじゃ麺や岩手牛の焼肉、奥州ポテトなども食べました。

二日目の夜、食べ歩きのあとに見た盛岡の花火は綺麗で、ウォークマンで大好きなSupercellの「うたかた花火」という曲を聞きながら見上げていました。

長くなりましたが、最後までお読みいただけたみなさま、ありがとうございました。
(連載記事ではいつも1文字ひねり出すのにウンウン難産なのですが、コラムは「長いよ!」と突込みがくるほど毎回長いです。)