2015年3月31日火曜日

【コラム】アンジェリーナ・ジョリーさんの卵巣切除の報道について

いつもスマイリーのホームページをごらんいただきありがとうございます。

代表の片木です。

先日、アンジェリーナ・ジョリーさんが卵巣がんの予防的切除として卵巣と卵管を切除したという報道がありました。

HBOCコンソーシアムの患者さん向けの啓発資料によると卵巣がん患者さんのおよそ10%がBRCA1 あるいは BRCA2 遺伝子の変異を生まれつき持っている「遺伝性乳がん・卵巣がん症候群」のようです。
参考:HBOCコンソーシアム


報道で「遺伝性乳がん・卵巣がん症候群」を知った患者さん、ご家族からここ数日お電話相談をいただいています。
自分もそうなのではないか・・・と気持ちがザワザワされていることを感じます。

ニューヨークタイムズ誌に掲載されたアンジェリーナさんの手記を読みましたが、彼女自身も「この決断が彼女特有のものだということ、この決断のもとになったのが、彼女の家族に伝わる病気の歴史だということ」を強調しています。
卵巣がんなら誰もが決断することでも、BRCA遺伝子に変異を持っている誰もが彼女と同じ決断をするように勧めているわけではないことを私たちは知っておく必要があります。

アンジェリーナさんは家族が卵巣がんで亡くした経験から、ご自身の遺伝子変異を知っていたこと、その上で多くの専門家の意見を聞いたうえで利益・不利益を確認したうえで決断したことを書いています。

そのことからも、私たちも安直に情報に飛びつくのではなくしっかり医師と話し合うことが大切だと感じました。
先にご紹介したHBOCコンソーシアムが患者さん向けに発行している冊子には、遺伝子検査を受ける前に考えておくことが示されています。
是非ご参考になさってください。


アンジェリーナさんの報道は、遺伝性乳がん・卵巣がん症候群を広く知っていただくこと、また一般に分かりやすく報じてもらうことでいい面もありましたが、残念なこともありました。
それは、あるテレビ番組でアンジェリーナさんの決断に対して「がんに詳しい医師」として紹介された方が下記のようにコメントした言葉です。

「卵巣を切除することで女性らしさが失われる」

すぐにその医師の経歴を調べましたが、婦人科がんに携わる医師でもなく、効果が証明されてないものを「療法」としてがん患者さんに高額で行なっている・・・・なんともかんとも残念な・・・。
どうしてこの番組がこの医師を取材したのか分かりませんが、なんていい加減な取材と医師のコメントかと呆れてしまいました。

そもそも女性らしさとは?
卵巣のあるなしできまるものじゃないってことは普通に考えればわかるはずです。

でも私たち卵巣がんになった患者は病気になったことで気持ちが弱くなったり、不安を感じたりということが多くあります。
卵巣がんの患者の多くは手術で子宮や卵巣を失います。
命がこうしてあることのありがたさを感じる一方で、子宮や卵巣を失うことで女性として辛い思いをする患者も少なくありません。
こうした心無いひと言がどれだけ患者の気持ちにダメージを与えるかと考えると本当に悲しくなりました。

世の中には正しい情報も正しくない情報も溢れていますが、そんなとき一番信頼できる情報は誰の情報ですか?
私は、そんなときこそ自分の主治医としっかり話し合うようにしています。
また、必要に応じて専門外来などを紹介してもらうこともできると思います。

あー、でも、こういう女性らしさとかいう言葉は本当に胸がチクチクしますね。


アンジェリーナさんの手記はこちらにニューヨークタイムズに掲載されています。